輸出依存国家に立ち込める黒雲

セイコー創業家CEOの追放と正論 (ニュースを斬る):NBonline(日経ビジネス オンライン)"
11月16日付でセイコーインスツルSII代表取締役会長兼社長代行の職を解任された服部純市氏の主張を、改めて谷島記者が取り上げています。

警鐘2 生産性の向上だけでは勝ち抜けない

 その典型例として、服部氏は自分が所属している時計産業を挙げた。日本の時計産業はクオーツ技術により、ほとんど時刻が狂わず、止まらない時計を安価かつ大量に作れるようになった。この結果、日本の時計メーカーは、スイスなど欧州のメーカーを蹴散らし、一時は世界一の座を占めた。

 ところが今や、顧客は2万円のクオーツ時計ではなく、数十万円もするスイス製の機械式時計を好んで買う。国内の時計売り上げを見ると、輸入時計の売り上げが国産時計のそれを上回っている。生き残ったスイスの時計メーカーが世界のリーダーに返り咲き、日本の時計メーカーは大量の時計を生産しているものの、作っても作ってもさほど儲からなくなってしまった。

生産性の向上=コストダウンはもちろん必要ですが、いつかは限界に突き当たります。その前に新たな付加価値(コスト以外の競争軸に移行する、新しい市場を創出する、など)を開発することが、長期的な生き残り戦略につながります。

警鐘4 輸出依存型のものづくりモデルは限界

 「日本は資源がない。だからものづくりに精を出して世界に売っていくしかない、という人がいまだにいる。とんでもない間違いだ。日本は過去、アメリカやヨーロッパにものを買ってもらったおかげで豊かになった。今度は、日本が発展途上国からものを買ってあげる番だ。日本は、海外から買ってきたものをうまく融合して、もっと付加価値の高い、新しい仕事をする。そういう時期に入っている」

 外貨を稼ぐために、日本は昔も今も輸出をするしかないはずだ。ところが服部氏は「日本のものづくりは空洞化してもかまわない」とまで言い切っていた。日本は、新しい「匠」のテクノロジーを開発して高付加価値製品を考案する。そのノウハウを発展途上国に提供し、完成品を作ってもらう。日本はノウハウのロイヤルティーを得てもいいし、途上国へ投資し、そこからリターンを得てもいい。何から何まで国内で作ってひたすら海外に売る事業モデルをしつこく追求しようとしても無理だ、というわけである。

先日、リーバイスのジーンズを新しく購入しましたが、タグを見たら"Made in Vetnum"とありました。しかも品質は悪くないどころか、むしろ良いのです。一昔前なら"Made in China"が安物の代名詞だったかもしれませんが、いまや衣料品の製造工場は中国ですらないのです。

ここで発想を転換して、いっそのこと「外貨」を必要としない経済圏を構築するというのはどうでしょうか。大前研一の書籍で「世界で唯一貿易に関係のない国家はアメリカである」という記述がありましたが、日本も広域圏で流通可能な通貨(電子通貨でもいいでしょう)の発行主体になる道は残っていると思います。だって、これからの日本は間違いなく「輸入超過」になりますから、”買い手の強み”が使えるうちに活用しといた方がいいんじゃないですか?