書籍「コンテナ・ベース・オーケストレーション」の紹介
はじめに
3/15に「コンテナ・ベース・オーケストレーション」が刊行されてから2ヶ月たちました。脱稿まで時間がかかってしまい、編集担当の方には大変ご苦労をかけてしまいましたが、そこそこ売れているようでホッとしております。
書籍の位置づけ
まえがきにも記載がありますが、自分としては企画段階で「プロダクション環境でコンテナを使う人のためのカタログ」ということを念頭に置いていました。そのため、DockerとKubernetesというデファクトスタンダードを重点とし、特にオーケストレーション機能の中心となるKubernetesについては多くの紙面を割いています。
背景
「2018年はコンテナ元年」=日本でもプロダクション環境をコンテナベースで運用する時代が到来する、という確信がありました。これは
- 前職での経験(IoTプラットフォーム)から、長期的にはハイブリッドクラウドがメインストリームになるという予想
- ハイブリッドクラウド、特にエッジコンピューティングとクラウドの併用のためにはアプリケーションのポータビリティが不可欠で、現時点での最適解はコンテナ
- 2017年初頭の時点でコンテナオーケストレーションプラットフォームとして完成度が高いのはKubernetes
- グローバルのユーザー動向を見ると、この数年でコンテナ(特にKubernetes)へのシフトが顕著になってきている
- 分散システムの基盤としてコンテナ(特にKubernetes)が主流になりつつある
ということを総合的に判断して、自分なりに立てたビジョンです。
執筆した箇所について補足
自分は4章「Kubernetes概要」の執筆を担当しましたが、4章ではKubernetesの各種マネージド・サービスやディストリビューションを選択する前提知識としての「Vanilla Kubernetes」を理解し、そのエッセンスを体得していただくことを目的としました。
そのため、環境依存の大きいネットワークについてはあえて割愛*1し、逆に、重要である割には情報の少ないPersistent VolumeやConfigMapについての解説を厚めにしています。
また、自分のマシンでKubernetesが一通り試せるように、Minikubeによるチュートリアルにも多くの紙面を割いています。執筆開始時点での取り決めによりKubernetes1.7ベースの内容になっていますが、最新バージョンとの差分情報は適宜補足していますので、読者の皆様にぜひ確認していただければと思っています。
執筆者ごとの担当章
書籍をご購入いただいた方から必ず聞かれるので、こちらにまとめておきます。(著者紹介に書いておくべきでしたが、脱稿作業に追われてそこまで気が回りませんでした。申し訳ありません。)
著者(敬称略) | 章 | タイトル | 内容 |
---|---|---|---|
前佛雅人 | 第1章 | コンテナ管理技術の普及とオーケストレーションを取りまく動向 | コンテナに至る技術動向の整理と現状の解説 |
前佛雅人 | 第2章 | Docker コンテナの基礎とオーケストレーション | Docker(Swarm含む)の技術解説 |
山田修司 | 第3章 | CaaS(Container as a Service) | さくらインターネットのArukasの開発者としてのCaaSの解説 |
須江信洋 | 第4章 | Kubernetesによるオーケストレーション概要 | Vanilla Kubernetesの基礎の理解と体験 |
佐藤聖規/福田潔 | 第5章 | GKE(Google Kubernetes Engine) | マネージドサービスのパイオニアであるGKEとGCPの解説 |
青山尚暉/市川豊/矢野哲朗 | 第6章 | Rancher | Rancher1.xと2.x(Kubernetesベース)の最速解説 |
境川章一郎 | 第7章 | Kubernetes on IBM Cloud Container Service | IBMが提供するマネージドKubernetesの解説 |
橋本直哉 | 第8章 | OpenShift Networking & Monitoring | Kubernetes商用ディストリビューションであるOpenShiftのOps向け紹介 |
平岡大祐 | 第9章 | OpenShift for Developers | 同じく0penShiftでDevOpsするための解説とチュートリアル |
著者各位へ
内容は須江の独断でまとめておりますので、修正のご要望があればお知らせください。
さいごに
企画したタイミングの都合で、比較対象として当然含めるべきマネージドサービスやディストリビューションが入っていないことが心残りです。
改訂するチャンスがあれば、AKS(Azure)やEKS(AWS)などのマネージド・サービスや、PCR(Pivotal)などのディストリビューションに関する解説も追加して、プロダクション環境でコンテナを使う人にとって有益な内容にアップデートできると嬉しいです。
*1:このへんの補足情報は特典コンテンツに記載しましたので、ご興味があれば翔泳社のサイトからダウンロードしてみてください。 https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798155371